女性の起業 スモールビジネス
~日経電子版より~
ビジネスを生み、変える 小さな起業家たち
新・産業創世記 消える垣根
東京都葛飾区にある一軒家の3階。
双子姉妹の早川博子(48)と山本順子(同)が
談笑しながら雑貨をつくっている。
ごく普通の主婦のようだが、
実はこの2人、
手づくり雑貨の世界では知る人ぞ知るスター作家だ。
ネットで売るインテリア雑貨を製作する
山本さん(右)と早川さんの姉妹(東京都葛飾区)
活動の舞台は雑貨の個人売買を仲介するサイト「ミンネ」だ。
子供部屋だったアトリエには素材や工具が所狭しと並ぶ。
売れっ子になったのはひょんなきっかけだ。
早川が友達に贈る手づくりの小物を、ものは試しと登録した。
しばらくは注文ゼロだったが、
ネットの書き込みで評判が一気に広がり「急に売れて驚いた」。
月収は100万円に上ることもある。
ネット企業のGMOペパボ(東京・渋谷)が運営するミンネには
14万人もの「作家」が158万点を出品する。
4~6月の取引額は10億円弱と、前年同期の4倍だ。
ソーシャルメディアの普及で
個人がビジネスを格段にしやすくなった。
扱うのはモノに限らない。
個人の空き部屋をネットで仲介する米エアビーアンドビー。
日本にも2カ月先まで予約が埋まる人気ホストがいる。
三木春子(76)。
都内の自宅の一室を1泊8535円で貸し、月に約20人が利用する。
洗濯や朝食などの「おもてなし」が世界から人を引き寄せる。
「この年齢で始められる仕事は他にない」(三木)
「素人」の市場参入には反発もある。
全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会は
個人の民泊が「旅館業法に抵触する可能性がある」とみる。
だが、個人が企業のライバルになる動きは止まらない。
野村総合研究所の上級コンサルタント、冨田勝己(40)は断言する。
「個人がサービスを提供する手間とコストが低くなり、
既存のビジネスは変革を迫られる」
流れにあらがわず、共生をめざす企業も出てきた。
米ハイアット・ホテルズ・コーポレーションは
エアビーアンドビーの競合サービス、英ワンファインステイに出資した。
顧客に新たな宿泊体験を提供し、満足度を高める手段に活用する。
新たな産業革命は始まっている。
企業も個人も身をすくめていては何も始まらない。
変革期こそチャンス。
歩きだそう。今すぐに。